Quantcast
Channel: 世界のお墓いろいろ
Viewing all articles
Browse latest Browse all 27

スウェーデンの墓

$
0
0
森と湖というとても自然の中にあるスウェーデンのストックホルム郊外の「森の墓地」というのがあります。 1900年代に約20年かけて作られたこの墓地は、 北欧でとても有名な建築家のグンナール・アスプルンドにより建築されました。 木々に囲まれた爽快な環境、一面芝生に覆われたゆるやかな丘や、 まっすぐに伸びるアプローチ、など、アスプルンドの功績が認められ1944年の世界遺産にも 登録されているように、初めて訪れた人は、ここがお墓だとは思えないような場所です。 森の墓は、「人は死んだら森に帰る」と言い伝えられている スウェーデン人の死生観を反映させた場所だと言えるでしょう。 門には、とても有名な「今日はあなた、明日は私」という言葉が刻まれています。 いづれは誰もが森に還り自然の一部となりますという「自然との共生」の想いが反映されています。 キリスト教信仰が広まったヨーロッパでは、人は死ぬと土葬して肉体を保持し、 死者の復活を待つという概念がありました。 しかし現代のスウェーデンには「死の追憶」という概念があり、 死体は火葬されるのが一般的で、遺骨はミンネスルンドという匿名墓地に埋められることがほとんどです。 スウェーデンでは1889年に火葬することが認められた事により 埋葬法が新しくなり匿名共同墓地ができました。 「追憶の森」という意味を持つミンネスルンドの支持率は高く、 1980年代以降500箇所に設置され今も増え続けており、なんと国民の70%が 支持しており人が死ぬと命日と名前は記録として残され、遺骨は匿名墓地に葬られます。 国民の75%がミンネスルンドを選択すると言います。 ミンネスルンドのデザインは、モニュメントになる芸術作品、 流れている水、共同の花を置く場所、芝生などが主な構成要素となっています。 ミンネスルンドでは、墓を建てることはいけない事だとされています。 ミンネスルンドでは、埋葬した人の情報を記録したものを台帳に残しています。 遺族には、埋葬する時には日にちなどの情報は知らされることは一切ありません。 何年何月何日に埋葬したかを後日知らされるだけです。 遺灰の埋葬には友達だけではなく家族も立ち会ってはいけないとされています。 この死者と生者を結びつける物的な象徴は徹底して排除され、 あるのは森や川や芝生、共同のモニュメントだけになります。 スウェーデンは社会保障が整った国でもありますし、個人は家族や親族など血縁を介さず、 社会と直接つながっているという意味合いが高いという考え方も、墓地にも反映されているともいえるでしょう。 キリスト教信仰が広まる前のスウェーデンで信仰されていた北欧神話では、 「バルドルの船葬」など火葬の場面が度々登場します。 しかし同時に土葬の場面も登場するように、 スウェーデンには、もともと複数の死生観が存在していたのでしょう。 つまり、スウェーデンには、追憶というコンセプトに裏付けられた火葬と、 死者は復活するというコンセプトの土葬の二つの考え方が存在したいたのです。 土葬の考え方は、スウェーデンにキリスト教信仰が広まった 12世紀以降のキリスト教信仰と意見が合い普及しました。 しかし、火葬の考え方もスウェーデン社会には残っていたために、 19世紀以降の近代化社会にマッチするように復活したものだと考えられています。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 27

Trending Articles